すこしだけ深堀りしてみるブログ

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ウクライナ侵攻の背景(2)

 

前回も書いたとおり、今回のウクライナ侵攻は世界を敵に回すような侵略行為であり、どう考えてもロシアにとって利があるとは思えない

冷静沈着な指導者といわれたプーチンが、なぜこのような愚行に出たのだろうか?

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2014年ウクライナに新政権が誕生すると、すぐさま「リトルグリーンメン」というロシア系武装勢力クリミア半島を占領し、クリミア自治共和国としてロシアが併合を宣言する

クリミア(濃緑)とウクライナ(薄緑)、ロシア(薄赤)

ロシアによるクリミアの併合 - Wikipediaより

 

またドンパス地方(東部地域)にもこの武装集団が進軍し、ドネツク民共和国とルガンスク人民共和国という反政府組織を作り一方的に独立宣言を行った

ロシアにとって重要な緩衝地帯(防衛線)であるウクライナNATOに取り込まれるわけにいかないプーチンは、西側に対して武力を使って脅しにかかったわけだ

プーチンは元々ロシア系住民が多いクリミア半島や東部地域に武力侵攻し、ほとんど抵抗なくその地を占領できた

これはプーチンにとって想定内だったのだろうが、ウクライナの独立主権とは所詮この程度のものだと改めて再認識したのかもしれない

西側諸国はこの併合と独立を認めず経済制裁を加えたが、あくまでもクリミア半島ドネツク地方の反政府組織の活動を衰えさせるための限定的なものであった

これがプーチンの間違いの始まりだった

経済制裁原油価格の暴落によって不況に陥ったロシア(プーチン)は、二度と西側経済に影響されないように「ロシア経済の要塞化」に力を注ぎだす

元々地下資源(石油・ガス)に頼っていた経済を多角化し、西側の技術や貿易への依存度を下げようとしたのだ

加えて対外債務を減らすために経済成長よりも財政立て直しを優先し、有事におけるルーブル保護のために外貨を貯めこむことに専念する

その結果、2000年当時石油・ガスで得られた利益はGDP比15%だったものを2019年には9%まで引き下げ、金融決裁システムなど西側に頼っていた最新技術の一部は、独自の技術で開発したものに移行させている

2014年以降は外国人からの外貨建ての借り入れも大幅に減らし、2022年までになんと6300億ドル(GDPの約4割相当)という外貨を積み上げてしまったのだ

2014年のクリミア侵攻で露呈したロシア経済の脆弱性を克服したプーチンは、自信満々で今回のウクライナ奪還に臨んだのだろう

一方アメリカの立場も変わりつつあった

2001年のアメリカ同時多発テロ事件をきっかけに、アメリカは国際的テロ組織およびテロ支援国家の撲滅に力を入れていく

アルカイダを擁護したとするタリバンの掃討(アフガニスタン紛争)、同じくアルカイダに兵器を供与し大量破壊兵器を開発しているという疑いでイラクフセイン政権壊滅(イラク戦争)などの軍事侵攻を行った・・が

多くの兵士や軍備を費やしてもテロ組織を駆逐することができず、その侵攻の意義さえ疑問視する声がアメリカ国内で高まっていく

ついにオバマはシリア内戦で「アメリカは世界の警察官ではない」と宣言し、その後はアメリカに直接危害が及ばない紛争には極力介入しなくなっていた

この背景にはアメリカのシェール革命もある

第1節 米国の「シェール革命」による変化 │ 資源エネルギー庁 (meti.go.jp)より

シェール革命によりエネルギーを他国に依存する必要が無くなったアメリカにとって、もはやエネルギー覇権に軍隊や兵器を注ぐことは無駄であり、武力を行使しなくとも必要ならば経済制裁で十分事足りる状況になっていたのだ

トランプがNATOから脱退すると言い出したのも頷ける

ヨーロッパの問題はヨーロッパで解決しろと思っていたアメリカにとって、ロシアのウクライナ侵攻はすでに関わりたくない出来事だったのだ

ウクライナは簡単に制圧できるし、経済制裁に対する準備はできていたプーチン

NATOに直接危害の及ばないウクライナの覇権争いは静観したかったアメリ

正直なところ、お互いにこのような激戦状態になるとは思っていなかったはずだ

しかしロシア軍がウクライナを包囲すると状況は一変する

ウクライナがロシアの強要に屈しようとしないのだ

クリミア占領以前は8割いたといわれる親ロシア派が、すでに2割まで減っていた

ソ連時代と変わらず力で国民を支配しようとするロシアの体制に嫌気がさしていたのだ

支持率が30%まで落ち込んでいたゼレンスキーはすぐに逃げ出し、傀儡政権を打ち立てることなど朝飯前だと思っていたプーチンにとっては確かに誤算だったろう

それでも圧倒的な武力をもつロシアが進軍すれば、数日でウクライナ軍を撃退し首都キエフを占領できる

ロシアはウクライナ全土を一気に制圧し、今頃は新しい大統領の国民投票が終わり親ロシア政権が樹立しているはず・・であった

いま、ロシアは一部の強権主義国家を除いて世界を敵に回している

ロシアに対する強力な経済制裁によってロシアのGDPは10%減少すると言われている

ため込んだ外貨も金融市場へアクセスできなければ何の役にも立たない

そんな目先の状況よりも怖いのが、ロシアのエネルギー供給に頼っていた西欧諸国が、一斉に代替エネルギーにスイッチすることだろう

またロシアに投資していた世界の多くの企業が一斉に手を引き始めている

ヒトもモノもカネも自国だけでは成り立たないこの21世紀に、世界から孤立することは国として成り立たなくなることを意味する

国境だけでなく、経済や情報にも壁を作ろうとしているロシア(プーチン)は、またもや国家崩壊の道を歩むのだろうか・・

今回の深掘りはここまで