母と娘の絆
次女に3人目の子供が生まれた
上の2人は女の子だったが、3人目は待望の男の子だ
上の子と言ってもまだ手のかかる姉妹を見ながら、産まれたばかりの赤ちゃんの世話をする娘を見て「もう立派な母親だねぇ」と私が言うと、「今更何言ってるの!」と妻
「いや・・昔のことを思うとホントにしっかりしたなと思ってさ」
「まあ、確かにね」
10年前は家にも寄り付かない次女だっただけに、その変わり様に驚くばかりだ
長女は妻に似て慎重派で勉強もコツコツやるタイプ、次女は私に似て楽天的で勉強は要領よくやるタイプだったと思う
長女は高校も大学も志望どおり進学して幼稚園の先生になったのだが、次女は志望校には行けず、折角入った大学も中退してしまった
専門学校に入り直したが、結局定職に就かずにバイト先を転々とする
酒を飲んでは夜中に帰ってきて、起きるのは昼過ぎという生活
髪は茶色くなって目にはカラコンを入れ、眉毛はないのにまつ毛は長い
部屋は変なぬいぐるみや服で溢れかえり、足の踏み場もない始末
「いい加減まともな生活したらどうなんだ!」
一度強く叱ったら、彼氏の家に行ったっきり帰ってこなくなった
それからというもの、ネットで買った服が着払いで届いた時か、金が無くなった時にしか家に帰って来ない日々が続く
「どうも最近サラ金で借金しているみたいなのよ・・」
「そんなもの放っておけばいい!」
「バイトも長く続かない、服やコスメは買い放題、金が無くなれば親が何とかしてくれると思ったら大間違いだ!」
「そうだけど、放っておけないわよ・・」
「一度痛い目に合わなきゃわからないんだよ!」
「あの子もいろいろあるのよ・・」
妻は次女が出て行ったあとも頻繁に連絡をとり、食事や身体や金の心配をしていたらしい
結局その後も妻は代引き商品を払い続け、「お金がいるなら私に言って!」と次女から請求書を受け取って借金を全部肩代わりしていた
それから1年ほどしたある日、次女がうちに帰ってきた
「パパ、ハグしてくれる」
「えっ!?」
「あなた、ハグしてやって!」
「うん・・」
その日から次女は、昔やっていたバイト先でもう一度働くことになった
毎日夜が遅いとは言え、キチンと家に帰ってくるようになった
しばらくすると仕事が評価されたのか、本社に正社員で来ないかという話になった
本社に行き始めると家族と一緒に食事をするようになり、今日あった出来事を面白おかしく話すようになった
ダンナとは同じ会社で知り合った、いわゆる出来ちゃった婚だ
結局結婚式も挙げないまま2人目ができ、昨年末に3人目が産まれた
「あの時のおまえからは想像もできなかったよ」と私
「私もそう思う・・」と次女
「それにしてもあの時よく帰ってきたよな」
「ママがずっと連絡してくれてたから・・」
「そ~よ、私が諦めなかったから良かったのよ~」と妻
「うん・・もし連絡してくれなかったら今の私はないと思う」
子育てとは本当に難しいものだ
どんなに厄介な子供でも、どんなに離れていようとも、細い糸一本でいいから繋がっていることが大事なのだ
母と娘の絶対に切れない絆を感じた休日だった
今日の深掘りはここまで