ガソリン価格と税金(2)
前回ガソリンが高騰していることを書いたばかりだが・・
そのあと米・日・中・印・英・韓が協調して石油備蓄を市場に放出することを決めた
需要と供給のバランスを取り、原油価格の高騰を早期に解消するのが目的だ
石油がさまざまな経済活動に無くてはならないモノだと言うことは前回も書いたとおりだが、実際にコロナ禍のリバウンドによる原油価格の高騰が、経済回復の足かせになっていたというわけだ
主要消費国が協調して石油備蓄を放出するのは極めて異例のことだそうだが、これによって原油価格が下がり物価上昇が収まるきっかけになればいいのだが・・
しかし、この備蓄放出が原油価格の下落に繋がるかどうかは分からないらしい
アメリカは5,000万バレルを今後数か月単位で放出すると発表したが、アメリカの1日の石油消費量は1,717万バレルなんだそうだ
ってことは、5,000万バレルと言っても約3日分ってことになる
仮に3か月間で3日分を上乗せしたとしても93÷90=103.3%だから、どれほどの値下げ効果があるかは確かに不透明だ
日本も数日分の石油備蓄放出を検討しているが、恐らく放出規模はアメリカとほぼ同じだろう
日本の1日の石油消費量は326万バレルだそうだから、仮に3日分だとすると1,000万バレル程度の放出となる
バイデン大統領が言う通り、これが原油価格下落のトリガーになれば良いのだが・・
トリガーと言えば・・
2010年、本来のガソリン税(28.7円)に暫定的に上乗せされていた暫定税率(25.1円)が、期限を付けない特定税率になったのと同時にできたのが「トリガー条項」だ
これは、レギュラーガソリン1リットルの月平均価格(総務省発表)が3か月連続で160円を超えた場合には翌月から特定税率(25.1円)の徴収を止めるというもので、3か月連続で130円を下回るまで続けることになっている
2021年10月の平均価格はついに163.58円となり160円のラインを超えた
11月に入り値上がりが止まったと報道されてはいるが、まだ170円近い価格で推移しているから11月も160円以上になることは間違いない
「じゃあ12月もこの状態が続けば年明けには25円安くなるの!?」・・と言うと、これがそうはならないのである
実は2010年にこの「トリガー条項」が決まった翌年、あの東日本大震災が発生し、その復興財源を確保するために「トリガー条項」は凍結されてしまったのだ
現在もこの条項は凍結されたままで、復活させるには国会での法改正が必要になる
もし今これと同じ措置を取ろうとすれば、石油精製所に補助金を出すなどの方法をとるしかないと官房長官が言ったのはこういう理由からだ
ところで東日本大震災と言えば、発生当初ガソリンが無くなることを心配した人たちがスタンドに長い列を作るという現象が起きた
コンビナート火災やスタンドの被災、輸送経路が絶たれたことにより一時的に東北地方で発生したのだが、そんな報道や噂を聞いた人が「ガソリンが無くなる」「値段が上がる」と勘違いして首都圏のスタンドに殺到したのだ
日頃ほとんど運転しない人まで給油の列に何時間も並んだというから、コロナ禍のマスク騒動以上に呆れてしまう出来事だった
この時首都圏のガソリンスタンドには概ね通常どおりのガソリンが供給されていたのだが、必要以上に給油する人が集中したことで売り切れが続出、それを聞いた客がまた殺到するという事態になったのだ
日本では1970年代の石油危機などを受け、有事のための石油備蓄を法律で定めている
国家備蓄は90日分以上、民間備蓄は70日分以上と定められているが、実際には2021年9月末時点で国家備蓄は145日分、民間備蓄などと合わせると242日分の原油や石油製品が備蓄されているそうだ
と言うことなので、あの時慌てた方もご安心あれ
ちなみに、今回の備蓄放出もこの中から行なわれることになる
今日の深掘りはここまで