すこしだけ深堀りしてみるブログ

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子宮頸がんワクチン接種は必要なのか?

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厚労省が8年ぶりに子宮頸がんワクチン接種の推奨を再開し、8年の間に接種年齢を過ぎてしまった人への無料接種を行う、というニュースが流れた

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「今更、何言ってんだよ!」と私 

「当時は結構副反応が出て、みんな接種しなくなったのよ」と妻

「だって海外じゃ接種するのが当たり前なんじゃないの!?」

「日本ではひどい副反応が何人も出て、大変だったらしいわよ」

「マスコミが興味本位で、そこばかり報道したからじゃないの?」

最近のメディアは話題性重視の偏った報道ばかりしている気がするだけに、どうしてもこういう言い回しになってしまう

「あれじゃ私だって打つのをためらうわよ~」

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「それに3回も接種しなきゃいけないし、結構お金もかかったと思うわよ」

「でもワクチンを打てばがんにならないんだから、必要経費だよ、それは!」

「まあねぇ・・」

「今更打てなかった人を救済するって言ってるけど、その間にウィルスに感染した人はどうするんだよ!」

「必要以上に怖がらせて、接種をためらわせたマスコミの責任は大きいと思うよ!」

「そんなの私に言われてもねぇ・・」

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確かに妻に不満をぶつけてもどうしようもないが、うちの孫は女の子が多いだけに、ここはキチンと調べてみることにした

子宮頸がんはHPV(ヒトパピローマウィルス)と呼ばれるウィルスに持続的に感染することで発症するがんで、毎年約1万人の女性が子宮頸がんになり、およそ2800人が亡くなっている

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子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために|公益社団法人 日本産科婦人科学会 (jsog.or.jp)より

最近のデータ(2015年)では40歳台の罹患率が一番高く、その次は30歳台となっていて昔と比べて若い世代の患者が増えている

HPVは主に性交渉によって感染し、生涯で感染したことがある女性は全体の50~80%と推定されている(男性も同じ)

そうなると性交経験がある女性のほぼ全員が感染していることになるが、感染したからと言って何か症状が出るわけでもないし、感染したら必ず子宮頸がんになるわけでもない

f:id:dfcarlife:20211228164401p:plain ウィキペディアより

ただ子宮頸がんの95%はHPVが原因だとわかっており、感染してから子宮頸がんになるまでに数年から数十年かかると言われている

HPVは200種類以上あるのだが、子宮頸がんの40~50%はHPV16型、20~30%はHPV18 型が原因だそうで、これ以外に52型,、58型、 31型、 33型などを加えたものをハイリスクHPVと呼ぶ

このハイリスクHPVが一定期間(6か月以上)陽性になっている状態が続くと、そのうちの約10%に細胞異常が見られるそうだ

軽い細胞異常(軽度前がん病変)が起こると、その中の一部はさらに強い異常(高度前がん病変)に進行する

これらの異形成は子宮頸がん検診で見つけることができるが、がん検診を受診しなければ気づかないまま子宮頸がん(浸潤がん)に進行してしまうというわけだ

子宮頸がんの60~70%はHPV16・18型によるが、20~40歳代で発症する若い世代の子宮頸がんではこの型の頻度が高く、特に20歳代の子宮頸がんの約90%はHPV16・18 型が原因だと言われている

子宮頸がん(浸潤がん)に対しては手術や放射線治療抗がん剤治療があり、最近の治療成績はかなり向上してはいるが、それでも進行症例の予後は不良だそうだ

治療によって命が助かったとしても、妊娠・分娩ができなくなったり、排尿障害などの後遺症で苦しむ患者さんも少なくないという

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子宮頸がんの予防には、性交渉を経験する前にワクチンを接種することが最も有効とされている

HPVワクチンには、2価ワクチンと4価ワクチンの2種類がある

2価ワクチンは子宮頸がんの主な原因であるHPV16・18型に対するワクチンで、4価ワクチンはHPV16・18型および尖形コンジローマの原因となるHPV6・11型の4つの型に対するワクチンだ

両方とも組換えDNA技術を用いてウィルスに似せた粒子を人工的に作成したものを抗原としているため、ワクチン自体に感染性や発がん性はない

接種回数は2価ワクチンが初回・1か月後・6か月後の3回、4価ワクチンが初回・2か月後・6か月後の3回で、投与方法はどちらも筋肉注射になっている

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子宮頸がんワクチン“積極勧奨”8年ぶり再開 機会逃した人の対応は | NHKより

2価がサーバッリクス、4価がガーダシルといい、どちらも対象年齢(小学6年生~高校1年生)であれば無料で接種できる

またガーダシルは男性がかかる病気(尖圭コンジローマなど)も予防できるとして、9歳以上の男性であれば接種できるようになっている(自己負担5万円程度)

最近では、2価、4価のHPV ワクチンに加えて、9つの型(6・11・16・18・31・33・45・52・58 型)をターゲットとした9価ワクチンが開発され、米国・オーストラリア・中国など多くの国で認可されている

この9価ワクチンは子宮頸がんの原因となるほとんどのHPV型を網羅するため、子宮頸がんの90%あるいはそれ以上が予防可能になると期待されている

日本では2020年に承認されたが、接種には約10万円の自己負担が必要になる

2023年4月より公費負担で接種できるようになった

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001073355.png  https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001073357.png

9価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン(シルガード9)について (mhlw.go.jp)より

ちなみに接種回数は9~14歳が初回と6か月後の2回、15歳以上は3回接種が推奨されている

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シックキッズニュース6月号(No.37) 「子宮頸がんワクチン」を再考しよう - かみぞのキッズクリニック (kamizono-kids.com)より

世界各国のHPVワクチン接種率(2016年)を見ると、ルワンダブータンが90%以上、アイスランド、マレーシア、イギリス、アイルランドデンマークスウェーデンハンガリーが80%以上などと、欧州各国は高い接種率になっている

これに比べて日本はと言うと、な・な・何と0.6%という状況だ

ワクチンの有効性が明らかで、世界に広く普及しているにもかかわらず、なぜ日本だけがこのような悲惨な状況になったのか・・

日本では2010年度からHPVワクチン接種に対する公費助成が開始され、2013年4月には定期接種化された

しかし接種後に疼痛や運動障害などの多様な症状が報告され、わずか2か月後の6月には接種の積極的勧奨が差し控えられることになる

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子宮頸がんワクチン接種再開検討 打つ? 打たない? | NHK政治マガジンより

公費助成が始まった時に接種対象だった1994〜1999年度生まれの女子のHPV ワクチン初回接種率は55.5~78.8%だったのが、2000年度生まれでは14.3%、2001年度生まれは1.6%、2002年度以降生まれは1%未満と劇的に減少してしまったのだ

接種後に起きた副反応の影響(報道による影響?)が、どれほど大きかったを示す数値だろう

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ではHPVワクチン接種で起こった副反応はどれぐらいあって、その後はどうなったのだろうか?

2017年11月に開催された厚生労働省の第31回副反応検討部会で、日本国内におけるHPVワクチン接種後に生じた症状の最新報告が公表された

これによると、2017年4月末までの副反応疑い報告数は3,080人(10万人あたり90.6人)、うち医師又は企業が重篤と判断したものは1,737人(10万人あたり51.1人)だった

HPVワクチン接種後に生じた症状についても議論が行われ、多様な症状とHPVワクチンとの因果関係を示唆するものは報告されていないとなっている

これ以外の疫学的調査でも、「HPVワクチン接種歴のない者においても、HPVワクチン接種後の症状と同様の多様な症状を呈する者が一定数存在した」ことが報告されているそうだ

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どんな薬やワクチンでも、必ず副反応は起こる

また、本来の副反応ではなくとも、異物を体内に入れるという不安と恐怖から本人も予期しないような症状が出てしまうこともある

ただ、副反応や予期せぬ症状が出るリスクを大きく上回るメリットがあるからこそ、薬を使いワクチンを打つのだ

産婦人科の先生方ならそのメリットとデメリットをしっかり説明して、親や女の子が、接種するかどうかを適切に判断できるようにしてくれるだろうが、接種しに来てもらわないことにはどうしようもない

大阪大学の研究グループは、2000年度から2004年度までに生まれた女性のうち、およそ260万人が無料接種の機会を逃したと分析している

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子宮頸がんワクチン“積極勧奨”8年ぶり再開 機会逃した人の対応は | NHKより

この世代の7割がワクチンを接種していたら、将来子宮頸がんになる人を2万2000人減らすことができ、5500人が子宮頸がんで亡くなるのを避けられたと試算したそうだ

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マスコミはSNSとは違って社会全体に大きな影響力がある

国民の多くはマスコミの報道を信用し、自らの判断の材料にしている

だからこそマスコミは偏った報道を出来るだけ排除し、出来るだけ公平な視点で正確な情報を流してもらいたい

8年間の空白を生んだ罪は、想像以上に大きいと思うのは私だけではないと思う

今日の深掘りはここまで